FRBが12月に利上げに踏み切った場合、次の動きは?

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Blu Putnam 2015年12月11日

要約
• 利上げの確率は約75%
• 米国経済、ドルへの影響は最小限にとどまる


米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長が発するメッセージは、今では透明性が高くなっている。米中央銀行によるほぼ10年ぶりの短期金利の引き上げに刻々と近づいているように見受けられ、同議長は、近頃多くの講演の場において、FRBがたどる可能性の高い経路をかなり明確に示している。

フェデラルファンド(FF)金利は、米国が経済的混乱に陥った2008年の大不況以降、ほぼゼロ近辺にとどまっており、その混乱を発端に、FRBは世界最大の経済大国の復活を目指し量的緩和と呼ばれる複数の資産購入プログラムを開始した。

我々は大勢のアナリストと同じく、2015年12月15・16日に予定される連邦公開市場委員会(FOMC)の会合の場において、FRBが利上げに踏み切ると予想している。FF金利先物価格に基づくと、FRBが今回の会合で利上げする確率は概ね75%と見込まれており、11月の約70%から上昇し、中国の株式相場と景気減速への懸念を理由に2015年9月の利上げを見送った後から一気に上昇した。米国の底堅い雇用統計を踏まえ、FRBは、極めて変動の大きい中国の株式市場に左右されるのではなく、金融政策を推進するために米国の経済指標へ関心を戻している。

今のところ12月のFRBによる利上げ決定は既定路線であることから、次の考慮すべき重要ポイントは、2016年のFRBによる次の利上げの動きになろう。この点に関して、イエレン議長は、FRBはインフレ統計をガイダンス(指針)に使用することを示唆している。

ところで、インフレ率の予測に関して言えば、FRBは、消費者物価指数(CPI)の総合指数ではなく、個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率の使用を選好している。CPIの総合指数は現在0.2%、コア指数(食品、エネルギーを除く)は1.3%であることから、PCE価格指数に基づくと、FRBは複数回の利上げを行うだろうか。

今後、エネルギー価格は前年比で大幅な下落を示さないと思われることから、2016年上半期の米インフレ指標は徐々に上昇するというのが、我々の見方である。それでも、インフレ率については、1.5%から2%の範囲内で推移するという見通しに過ぎない。この低水準のインフレ見通しを考慮してみると、FF金利は2016%末までに1%近辺にとどまる可能性がある。FRBは大不況に起因するゼロ金利政策を解除する可能性があるが、急激なペースで、または同じペースで段階的に利上げをしないとみられる。

利上げが米国経済にもたらす影響は、ほとんどなきに等しいと思われれる。0%と1%の差は、どちらにしても企業の投資計画や個人消費に目だった変化をもたらすには不十分である。さらに、政策のステップがまったく極めて弱いことから、米ドルへの影響でさえも、直観に反した結果になるかもしれず、そのためユーロは少し上昇するかもしれないのだ。

注視する必要のある他の市場の変化の一つは、一般的に月の中旬に発表される月次のインフレデータへの注視が更に強まるかどうかである。ただ、今のところ、毎月最初の金曜日に発表される雇用統計は、依然として市場動向を左右する最重要指標である。

最後に、インフレ率のペースもまた、米10年国債利回りと他の長期国債の展開に影響をもたらすとみられる。FRBがゼロ金利を解除したとしても、インフレ率が低水準にとどまるということは、利回り曲線のフラット化(国債利回りは少し動くかほとんど動かない)を示唆する。


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