米国は中国と経済的パートナーシップを 組むべきなのか?

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Blu Putnam 2015年12月22日

概要
• 中国経済は確実に米国と同格の水準に達する、と経済学者のN.ルービニは予想する
• トレード・パートナーシップ関係で、米国への中国リスク縮小が期待できる


中国経済は失速感を強めており、金融や商品市場の取引参加者は、この世界第2位の経済がリセッション(景気後退期)入りする可能性に、懸念を強めている。11月にCMEグループが主催したGFLC(グローバル・ファイナンシャル・リーダーシップ・コンフェランス)で、経済学者のヌリエル・ルービニは、中国経済の成長力後退に伴う不安定な状況を予想したものの、それがハードランディングとはならないとの見通しを示した。GFLCの参加者が大勢としてこの意見に賛同した一方で、その他のチャイナ・ウォッチャーに対してルービニを際立たせたのは、米中の外交関係を、世界の金融市場の潜在的リスクとして指摘した点だった。

ルービニの論点は、米国が中国に対するスタンスを、これまでの「封じ込め」から、より協力的な「経済的パートナー」に転換することで、中国経済の失速を背景とする世界経済のリスクは軽減することが可能になる、と言うことだった。この論点の根拠には、今後10年で、例え国民一人当たりの消費で大きな格差が残るとしても、中国経済は確実に米国と同格の水準に達するとする彼の予想がある。さらに、米国の石油生産が拡大する一方で、中国は中東原油の主要な消費国として台頭してきている。また、アジア太平洋において、中国は既に支配的な経済力を有しているという事実もある。

こうした背景の一方で、IMF(国際通貨基金)や世界銀行などの国際機関において相応の影響力が担保されていない状況に、中国政府の不満感が高まっている、とルービニは指摘する。また、こうした機関でその経済規模に応じた責任を中国が負うことについて、米国はこれまで非協力的だったのも事実である。その意味では、世界的な貿易交渉でも、中国は大体において無視され続けてきた、とも言える。こうして、不満感を高めた中国は、他の新興国と代替的な資金調達機関を設立するに至り、米国はアジア太平洋地域での影響力後退を招く結果に至っている。

要約すれば、経済的なリスクと政治的なリスクは相伴っている、というのがルービニの論点となっている。彼は、米国の「封じ込め」政策は最終的に、中国経済の規模や世界経済の中で中国が果たすべき役割などについて、現実を受け入れることになると考えている。それならば、米国が対中戦略を交易パートナーシップの様なアプローチに自ら転換することで、中国リスクの軽減と世界的な経済成長を目指すことが可能になる、と言うことである。

先ごろ、IMFは国際準備資産SDR(特別引出権)の通貨バスケットに人民元の採用を決定した。中国通貨の採用自体は象徴的な出来事に過ぎないかも知れないが、米国が非協力的であり続けるかは別にしても、中国が世界的パワーへの歩みを進めている証左の1つではある。もちろん今回、SDRの通貨バスケット内で人民元に11% の加重比率を提供するため、その余地のほとんどを提供したのはユーロであり、米ドルの譲歩は非常に限定的だった。確かに、政治的リスクによって金融市場のリスクが喚起されるというルービニの視点は、興味深い洞察である。実際、1700年代には、市場動向に関する分析は政治経済学の分野と認識されていた背景もある。



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